令和7年度企画展「あれもこれも公文書~形態から見る公文書の世界~」

開催期間 | 令和7年9月5日(金)から令和7年12月14日(日)まで |
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場 所 | 福岡共同公文書館 1階展示室(筑紫野市上古賀1-3-1) |
内容
【Web展示】
「あれもこれも公文書~形態から見る公文書の世界~」
時代の流れとともに変容する公文書の形態について、作成・保存の様式に着目し、様々な形態の作成物や保存のための媒体・容器など、物質的な視点から眺めた歴史的公文書の様相を紹介します。
「あれもこれも公文書~形態から見る公文書の世界~」
時代の流れとともに変容する公文書の形態について、作成・保存の様式に着目し、様々な形態の作成物や保存のための媒体・容器など、物質的な視点から眺めた歴史的公文書の様相を紹介します。

第1章 公文書の作成
公文書も人間が作成する文書です。時代の流れや人間の意識の変化、テクノロジーの発達などに合わせてその作成の様式・形態も変遷していきます。毛筆やペンによる手書きの文書が主流だった明治・大正時代。和文タイプライターやワードプロセッサー等、人間の手の代わりを務めてくれる機械を併用した昭和時代。そして猫も杓子もパソコン・スマホ・タブレットと言った、人間の手の能力をはるかに超える情報機器を駆使して文書を作成する平成・令和時代。
第1章では、それぞれの時代、それぞれの用具によって作成された公文書の特徴や個性を紹介します。

①手書き(毛筆)文書
当館の所蔵する特定歴史公文書・行政資料は明治期以降のものですが、やはり明治期には毛筆書きの文書がたくさんあります。時代が下るに従って徐々に少なくなりますが、何らかの儀礼的な場面での公文書には毛筆が使われる傾向が多く見られます。
公立学校の卒業証書なども公文書のひとつですが、現在も卒業生の名前だけは毛筆書きする、という学校も多いようです。
画像は、歴史教科書でおなじみの明治期のあの大臣たちの署名です。おそらく本人たちの直筆ではないと考えられますが、手書きの文字にはそれを書く人のクセが如実に表れ、同一人物の名前でも全く違った表情を見せてくれます。
『官省御内達』(福岡県公文書:1-1-0058972)
『官省内達内訓訓示』(福岡県公文書:1-1-0058975)
『官省内達内訓訓示』(福岡県公文書:1-1-0058976)

②パソコン文書
時代と共にテクノロジーも進化し、タイプライターやワードプロセッサー(ワープロ)といった機器を併用するようになると、クセの無い活字体文字で迅速な文書作成が可能となりました。
更に時代が進み、現在はパーソナルコンピューター(パソコン)による文書作成が主流です。画像に見るように、文書だけでなく表計算、種々のグラフ、図や写真、地球規模での収集情報などを統合して、一体感のある体裁で書類にまとめることができます。
以前なら、写真は文書原稿に直に貼付け、図やグラフもまずは別紙に描いて切り抜き、それを原稿に貼付したものです。最新の世界情報など、よほどの伝手と国際電話などの法外な費用に耐え得る予算が無ければ不可能でした。今やパソコン1台とインターネット環境があれば、誰でもこれらのことが椅子から立ち上がることも無く、机上でシームレスに実行できる時代なのです。
『全国CCZ整備推進協議会』(築上町公文書:1-2-0019815)

2章 公文書の保存形態
公文書の保存も基本的には一般的な私文書と同様で、一連の文書の散逸を防ぐためひとまとめにするものです。そして、文書ごとに形やサイズが違えば当然その保存形態も違ってくる可能性があります。また一回こっきりのものか繰返し利用するものか、あるいは一定の期間を経て差し替えや追加が起こるのか、といった文書の用途や利用頻度によっても保存の様式・形態は変わってきます。
このコーナーでは、一般的な紐綴じのもの、文書が傷まないよう厚手の表紙を付けたもの、綺麗に製本したもの、スタイリッシュなファイルに綴じたもの、デジタルデータ等々、様々な保存形態を紹介します。

①紐綴じ簿冊・上製本
用紙の傷みを防ぐため、また文書を立てて保管したい場合、あるいは文書の見た目を体裁良くしたい場合など、厚手のしっかりした表紙を付けることがあります。
板目表紙は和紙を何枚も張り重ねて堅く厚くしたものです。綴込み表紙は外見から「黒表紙」ともよばれることがあり、中身の文書に差替えや追加が想定される場合によく使われるようです。
平綴じ上製本はさらにしっかりした表紙を付け、ハードカバー本に仕立てたものです。高級感があり、長期保存にも適しています。
板目表紙:『議事録 友枝村会』(上毛町公文書:1-2-0001713)
綴込み表紙:『建花寺地区県営ほ場整備事業事前協議等(県営土改良事業計画一般図 建花寺地区)』(飯塚市公文書:1-2-0023329)
平綴じ上製本:『農村総合整備計画書作成業務 報告書』(柳川市公文書:1-2-0021619)

②ファイル・紐括り
今現在使用されるファイル素材は、ほとんどが紙、プラスチック、ビニール等で、綴じ具には金属が使われることも多いようです。
画像に掲げた「昔のファイル」は、背も表紙も材質は木で、それを紙と布でコーティングし、綴じ具と表紙の角に金属が使われているという、見た目も手触りも非常に堅牢なファイルです。
また、閲覧の便宜を図るためにマイクロフィルムに撮影したり、デジタルデータに変換したりした後の原本は、閲覧頻度も高くないため再製本せず、紐で一括りにして保存することもよくあります。
昔のファイル:『戦没者台帳 陸 自1001 至1700 2』(大牟田市公文書:1-2-0012020)
今のファイル:『広報ふくつ 2025年度』(福津市行政資料:2-4-0026446)
紐括り:『福岡県公報 昭和40』(福岡県公文書:1-1-0057513)

③紙以外の保存媒体
音声や映像も公文書として保存されています。かつてはレコード、フィルムといったアナログ方式の保存媒体でしたが、近年はデジタル方式に切り替わってきています。
レコード:『田川市民の歌 知っていますかふるさと』(田川市行政資料:2-4-0012644)
映画フィルム:『大嘗祭悠紀主基斎田 16ミリ複製フィルム 1巻』(福岡県公文書:1-1-0042325) フロッピーディスク:『第26回全国身体障害者スポーツ大会開・閉会式』(福岡県公文書:1-1-0027673)
DVD:『平成29年7月九州北部豪雨災害記録映像』(福岡県行政資料:2-4-0010155) USB:『竣工図書』(福岡県公文書:1-1-0066182)
『竣工図書』(福岡県公文書:1-1-0066090)

第3章 様々な資料~「文」でも「書」でもない公文書~
公文書の目的は、住民の福祉と生活の向上を目指して各々の自治体が取り組んだサービス計画や施策を記録として残すことです。道路整備、教育、防災、環境など、多岐に渡るそれらの記録は、住民の生活が向上したか、住民の幸福度が増したか否かを後々検証するための物的証拠であり、また次のステップを目指す計画の参考資料でもあります。
このコーナーでは、絵図やレコードなど、「文」でも「書」でもないけれど自治体の施策の中身をより具体的に可視化・可聴化し、物的証拠としての公文書の価値を補強する様々な資料を紹介します。

①アートな公文書
青図:『軌道許認可』(福岡県公文書:1-1-0023929)
鮮やかな紺地に細い白線で精緻に描かれた電車の車体の設計図です。
絵図:『旧中広川絵図』(広川町公文書:1-2-0000426)
額縁に入れて壁に掛けると素敵なインテリアになりそうです。

②ビートの効いた公文書
『遠賀町町歌レコ-ド』(遠賀町公文書:1-2-0057613) 芦屋町や水巻町など、近隣自治体の歌のレコードも同封されています。
『遠賀町町歌レコ-ド』(遠賀町公文書:1-2-0057613)
『遠賀町町歌』のレコードに同封されています。
『遠賀町民音頭』同様、踊りの振付けも収録されています。
和風ビートの効いたダンサブルな公文書です。
『小郡 七夕サンバ』(小郡市行政資料:2-4-0012646)
歌っているのは、あの大ヒット曲『別れても好きな人』のシルビアさん。織姫・彦星の悲恋にピッタリです。(狙ったか?)
サンバの振付けは付いていませんでした。残念!!