公文書館発の県内市町村のご紹介、今回は直方市です。
さっそくですが、問題です。
直方市の正しい読みを答えましょう。
「直方」市→「〇〇〇〇」市
福岡県内の方には簡単な問題ですが、県外の方には意外と難読地名だったりします。
答えは「のおがた」市です。
もしかしたら、「のうがた」と間違えて覚えている人もいるのでは…。
発音してみると、「お」なのか「う」なのか迷ってしまうことってありますよね。
そんな迷える人々のために、直方市ではこんなキャッチコピーをご用意されています。
(直方市HPより) |
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楽しいキャッチコピー!
これでしっかり覚えました!
直方市は、福岡県の北部に位置し、飯塚市、田川市と並んで筑豊三都と称されています。
福岡県内の直方市の位置図
形と言い位置と言い、まるで福岡県の心臓のようです。
古くは福岡藩の支藩でしたが、享保5年(1720)年に廃藩となった後は、
長崎街道の木屋瀬宿と飯塚宿の間に置かれた中継地「立場(たてば)」として、
人馬の継立や飲食物の提供を行いました。
明治時代になると、筑豊で産出した石炭の集積地となり、問屋的な役割を担います。
直方駅には操車場や機関区が置かれるなど鉄道輸送の基地として、
また乗合自動車の路線もおびただしく、交通の要衝として栄えました。
炭鉱機械工業や商業の町として石炭産業の盛衰とともに歩んできた町でもあります。
エネルギー革命が起こった昭和30年代以降は、脱石炭への努力を続け、
工業都市、生活都市への発展を遂げました。
(参考『福岡県百科事典』)
昭和6年ごろの直方駅構内(1-1-0024547) |
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直方町交通図(部分)下方部の丸がすべて乗合自動車の会社です。直方駅を起点に様々な乗合自動車が路線をめぐらせていることがわかります。(1-1-0024547) |
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直方市の沿革としては、まず大正15年11月に、直方町・新入村・福地村・頓野村
下境村が合体して直方町となり、その後、昭和6年(1931)に市制施行して直方市となりました。
福岡県では9番目の市ということになります。
この時の市制施行申請書は、福岡県公文書のなかに残されています
(1-1-0024547「市制町制施行」)。
添付資料の交通図や写真などは、市制施行時の直方の繁栄を物語る貴重な資料といえます。
昭和の大合併が行われていた昭和30年、植木町を編入して現在と同じ市域が確立しました。
直方市から当館に移管された特定歴史公文書は、2020年9月現在で838点に及びます。
公文書の内容を見ると、〈歳入歳出簿〉が最も多く、教育委員会や農業振興課などの文書も
多く移管されています。
そのなかで注目されるのが、昭和27年に戸畑市、直方市、飯塚市、田川市、柳川市の5市による
一部事務組合として設立された「福岡県五市競輪組合」に関する公文書です。
昭和23年に公布された自転車競技法のもと、小倉を発祥として始まった「競輪」ですが、
昭和27年にこの「競輪」事業の共同運営を行う目的で設置されたのが「五市競輪組合」です。
組合に関する当館所蔵公文書102冊の内92冊が直方市から移管されたものです。
現在でこそオリンピック競技として注目されている自転車競技ですが、
「競輪」の歴史は様々なトラブルや社会的な反発など、
決して順風満帆ではありませんでした。
しかし一方で、自治体財政への功績が大きかったことも事実です。
小倉や久留米の競輪場を借りて、五市競輪組合主催のレースが行われ、
その収益は組合自治体に分配されました。
この「五市競輪組合」文書は、昭和27年の第1回議会事蹟から存し、
平成にいたるまでの組合の活動をたどることができます。
昭和27年時の「競輪」競技のルールブックなどは、自転車競技の歴史を知る上でも
好資料といえるでしょう。
その他東京オリンピックの聖火リレー写真や、昭和50年前後の九州縦貫自動車道や
山陽新幹線延伸に関する文書といった、
高度成長期の社会の様子を示す資料などもあり、バラエティに富んだ公文書群になっています。
第1回議会事績を含む五市競輪組合文書(1-2-0004273) |
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五市競輪組合競輪実施規則(昭和27年)より。当時の選手の服装(シャツ)は「布又は毛製半袖の見苦しくない色彩のもの」と定められていた。(1-2-0004445) |
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東京オリンピック(1964)の聖火リレー隊員委嘱状(1-2-0004363) |
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直方市聖火リレー団の集合写真(同上) |
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写真出典:
1-1-0024547「市制町制施行」(福岡県公文書、昭和6年度)
1-2-0004273「議会事績」(直方市公文書、昭和29年度)
1-2-0004445「組合条例規則綴」(直方市公文書、昭和28年度)
1-2-0004363「オリンピック東京大会聖火リレー写真集」(直方市公文書、昭和39年度)
次は、筑後市です。