今回は、香春町(かわらまち)を紹介します。
◆香春町の位置◆
香春町は福岡県の東北部に位置しており、東西6.45キロメートル、南北10.6キロメートルの町です。町の北部は北九州市小倉南区(きたきゅうしゅうしこくらみなみく)、南部は赤村(あかむら)、大任町(おおとうまち)、東部はみやこ町、西部は田川市(たがわし)、福智町(ふくちまち)と接しています。
◆香春町の地理◆
香春町には、国道が2本、県道が6本、町道が378本通っており、北部には福智(ふくち)山系の牛斬山(うしきりやま)と、西に香春(かわら)一ノ岳、二ノ岳、三ノ岳、東に貫山(ぬきさん)山系の障子ヶ岳(障子岳)(しょうじがだけ(しょうじだけ))・飯岳(大坂山)(いいだけ(おおさかやま))があります。
『福岡県慣行委推進協議会(観光づくり)』平成19年度 福岡県公文書(1-1-0019798)
◆香春町の紹介◆
人口約1万人(令和6年11月末現在)を有す香春町は古い歴史があります。
初めて公式文書に登場するのは八世紀に編集された”風土記”であり、その語源は古代朝鮮語にそのルーツを探ることが可能で、古くより朝鮮半島や中国と密接な繋がりがあった土地であることが分かります。
町名の「香春」の地名の漢字は複数あります。「河原、鹿春、清河原、加波流、賀春、香春、香原」などと多様に書き残されています。
それらの語源は、古代においてカパル(急険な)カグポル(金曜日)と言う意味から来たという説もあります。
その原典は、万葉集の九巻の歌に「豊国の香春(加波流)は吾宅・・・」や豊前風土記に「田河の郡、鹿春の郷・・・」語源はいずれも『川原』の意味から取ったあて字であって、金辺川(清瀬川)の美しい川原の意味であると書かれています。
また、和名抄には「田川郡香春郷あり、香春は、加波留又は『カハラ』と訓むべし。』と出ています。
そして、中世の頃には香原の字も見えますが、香春が定着したようです。
周辺は香春岳をはじめとする山々に囲まれ、数々の史跡や文化遺産にも恵まれており、万葉集には香春を詠んだ短歌が7首あり記念の歌碑も建っています。
『福岡県観光推進協議会(観光づくり)』 平成19年度 福岡県公文書 (1-1-0019798)
また、町内には4つの窯元があり、陶芸のまちとしても有名であります。
古くは風土記や万葉集、太宰管内誌さらには小倉日記や炭坑節、そして青春の門などと歴史、文学、紀行等に多く登場している香春の地は大宰府と奈良を結ぶ”大宰府官道”「田河道」の時代より変わらず、現在も国道201号線と322号線のクロスする交通の要です。
『福岡県慣行委推進協議会(観光づくり)』平成19年度 福岡県公文書(1-1-0019798)
◆昭和の大合併・平成の大合併◆
1887(明治20)年に香春町と下香春村が合併し誕生した香春村は、1898(明治31)年の町制施行により香春町になりました。勾金村(まがりかねむら)は1889(明治22)年に5村が合併し発足しました。採銅所村(さいどうしょむら)は、1887(明治20)年に3村が合併して発足しました。
1956(昭和31)年、この1町2村が合併し現在の香春町になっています。
このときのいわゆる昭和の大合併の際は、状況が二転三転しました。
1954(昭和29)年10月、香春町・勾金村・採銅所村の合併計画が県から示されるが、翌年(昭和30)年2月に赤村が3町村の合併に参加したいと申し入れたことで、合併への赤村参加について3町村間で紛糾し、4月に香春町の後日参加を前提とした勾金村・採銅所村・赤村の3村は合併協議会設置し、7月に「金辺村(きべむら)設置」申請書を知事に提出しました。提出後もは続き、3村の議長は香春町が4町村合併を表明するならば、8月5日までに4町村の合併の申請書を県に提出するが、それができなければ「金辺村設置」を認めてほしいと申し出ましたが、県は9月に3村合併「金辺村設置」の申請を却下しました。
その後、1956(昭和31)年8月に赤村が合併を辞退し、9月に香春町・勾金村・採銅所村が申請書を県に提出し、香春町(新設)が誕生しました。
『市町村の廃置分合』昭和30年度 福岡県公文書 (1-1-0024679)
『市町村の廃置分合』昭和31年度 福岡県公文書 (1-1-0024692)
『合併協議経過(旧田川郡合併関係)』平成16年度 福岡県公文書 (1-1-0041500)
平成の大合併の際も、近隣市町村との合併協議がなされましたが、合併には至っていません。
◆第5次香春町総合計画 2022-2031◆
2022年に町の将来の発展を促進するために2022(令和4)年からの10年間、まちづくりの基本的設計図となる「第5次香春町総合計画」を策定しています。
「暮らしを守る」・「人を育む」・「社会をつくる」という3つの目標達成のため、みんなでめざす「まちづくりアクション」として具体的な取り組みを示しています。
第4次香春町総合計画で掲げたキャッチフレーズ「好きです♥かわら町」の思いをさらに深化した「みんなが交わり関わり合えるまち」「みんなが元気で暮らすまち」「みんなの夢が叶うまち」新たなまちづくりのキャッチフレーズ「愛しかないっちゃ♥かわらまち」としています。このキャッチフレーズには、人口減少・高齢化が進む中、将来像に示す町民一人ひとりの安全・安心で健やかな暮らしやみんなの夢が叶うまちを実現するには、町民や香春町に関わる人たちの「愛」が必要であるという想いが込められています。
この計画には、以下のような施策があります。
「定住支援策の充実」
新たな町への移住・定住の促進を図るため、移住・交流の拠点として「採銅所駅舎内第二待合室」を開設し、地域おこし協力隊や空き家コーディネーターによる移住相談や空家の紹介、交流イベントの開催などで移住・定住促進を図っています。
また、移住・定住希望者に向けた支援策として、定住奨励金、リフォーム等補助金などの各種補助金制度による支援を行っています。
『広報かわら 2024年8月』令和6年度 香春町行政資料 (2-4-0024331)
「教育内容の充実」
香春町立香春思永館(かわらしえいかん)は、町立4小学校(香春・勾金・中津原・採銅所)、2中学校(香春・勾金)を統合して令和3年4月に開校した9年制の義務教育学校です。
義務教育学校では、小学校相当が前期課程、中学校相当が後期課程と区分され、1~9年生という呼び方になります。9年間の教育課程において、学年段階の区切りは自由に設定できますが、香春町では、小学校、中学校相当と同じ、1~6年生を前期、7~9年生を後期として学年段階を設定し、前期課程と後期課程が一緒の建物で学ぶ施設一体型の学校です。
香春思永館は、英語教育、ICT教育、キャリア教育、ふるさと教育の充実の5つの特色ある教育方針を掲げ、学力向上とともに社会を生き抜く力を育む学校教育を推進しています。
『まちの情報誌かわら 2021年4月』 令和3年度 香春町行政資料 (2-4-0016209)
これらの施策以外にも、「公共交通ネットワークの充実」や「地域企業・企業誘致の推進」等の重点施策が掲げられています。
次回の「公文書でめぐる ふるさと福岡」もお楽しみに!