去る8月3日(土)に当館の公開講座、「親子和綴じ講座」を開催しました。
講師として倉本優子先生をお招きし、26名の親子の方たちが頑張って和綴じのメモ帳を作成されました。
普段は、なかなかお子さまに来ていただけない公文書館ですが、
今夏は、企画展「学校給食ヒストリー」や今回の「親子和綴じ講座」などの開催により、
館内に子供たちの元気な声がひびき、楽しそうな笑顔を見ることができ、
スタッフ一同大いにいやされております。
さて。
今回は「和綴じ」から話を始めましたので、公文書の綴じ方について書いてみたいと思います。
みなさんは、公文書というと、どのような姿を想像されるでしょうか?
福岡共同公文書館は、明治から平成までの、福岡県および県内58の市町村の公文書を保存しているので、いろんな時代の、いろんな自治体の公文書を一覧することができます。
そうやって見てみると、「公文書」と一口に言っても、本当に様々な姿をしていることに改めて気づかされます。作成された時代や、作成・使用・保存されていた場所(自治体)によって、その姿は異なるのです。
たとえば、明治時代のある村の公文書。
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明治9年の上山田村(現・嘉麻市)の地租取調帳(村控)です。
地租改正に伴って作成された文書で、地租の区分(地目)、等級、地租金一覧などが記載されています。
この文書は、表紙に表題を直書きした(打付書)、四つ目綴じの装丁となっており、
こうしてきちんと製本されているところを見ると、地租に関する重要な文書として
長く保存されることを予定して作成されたことが想像されます。
このような体裁は、いまだ近世の気配が色濃く残る明治初期という時代性を強く感じさせるものです。
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これは、明治24年に作成された赤村の「村会議件及雑書留」という公文書です。
村会の開設告知や議決報告などを綴ったものです。
共表紙にこより綴じという体裁は、近世の文書でもよく見かけますが、
明治期の公文書でも多く見られるものです。
先の地租取調帳と異なるのは、地租取調帳が完結文書として製本されているのに対し、
こちらは、こよりによる仮綴じの体裁であるということです。
こうした年ごとの議会文書(仮綴じ)を数年分まとめて製本している例をよく見かけます。
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こちらは、時代が少しくだって、明治終りごろの福岡県の公文書です。
表題が打付書きされ四つ目綴じの、和本の体裁ですが、
先の明治9年のものとは異なり、背の部分を表紙と同じ用紙でくるんであります。
包背装の一種と考えられるこの体裁では、小口の部分に何も記されない代わりに、
背の部分に表題が記載されており、和本は平置きが基本ですが、
こちらは縦置きに保管されていたのではないか、と想像されます。
文書の保管の仕方も徐々に近代化されていく様子が、こうしたささいな変化からうかがえるのです。
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こちらは昭和初期ごろ、横山村(現・八女市)役場が作成した道路台帳です。
表紙は厚紙で、上下二ヶ所をこよりで綴じています。
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こちらは津屋崎町(現・福津市)の町条例という公文書です。
昭和3年に作成され、昭和26年まで使用されていたものです。
黒表紙に、上下二ヶ所の紐綴じで、背は表紙とは別の紙が付されています。
(この背表紙は後補のようです)
長期間使用するために、中身を加除しやすい様式になっており、
縦置きで整理しやすいよう、表紙は厚手で、背にもしっかりした用紙を用いています。
昭和も終わりごろになると、紐綴じに代わって、
金属などの留め具がついたファイルが登場してきます。
こちらは昭和57年の福岡県公文書です。
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レバーファイルが用いられています。
レバーファイルは、穴をあけずに文書を綴じておくことができ便利ですが、
留め具をはずすと文書が散乱してしまう恐れがあるので注意が必要です。
また、大量の文書を綴じるのには向きません。
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こちらは、平成4年の福間町(現・福津市)の公文書です。
パイプ式ファイルが用いられています。
穴をあけて綴じるタイプのファイルで、大量の文書にも対応可能です。
仕切りやインデックスを使って、文書を整理することができます。
しかし、容量に合っていないファイルを用いると、
無駄に場所をとってしまうという難点があります。
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こちらは平成21年の岡垣町の公文書です。フォルダで整理されています。
フォルダは、1枚の厚紙を2つに折った紙挟みです。
フォルダのタブにタイトルを書いて、文書を挟んで立てて並べて使います。
検索性、利便性の良いファイリング方法で、文書の見直しがしやすい、
廃棄しやすいといった特長があります。
フォルダは、ボックスファイルで保存したり、引き出し式の什器に並べて保存したりします。
以上、見てきたように、公文書の綴じ方は年々変化してきました。
それは、道具の進化ということだけでなく、
書棚、机などの什器を含む執務室内の環境の変化からの要求によるものと考えられます。
執務室の環境は、自治体それぞれで異なりますし、
文書管理の方針もまた自治体ごとに差異があることから、
公文書も年代ごと自治体ごとに様々な姿をしているのだと思います。
内容ばかりに目が行きがちですが、公文書を外側から見てみるのも、案外楽しいものです。
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