福岡公文書館ブログ

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    ミニ特集「公文書と〈害虫〉」より ③IPM日記

    朝晩冷え込んでまいりましたね。皆さま、秋の夜長の虫の声♪は耳にされましたか。

    今回は、常設展秋のミニ特集「公文書と〈害虫〉」より、文化財IPMと当館の【館内IPM】のお話です。またしても、虫の写真が出てきますので、苦手な方はご注意ください。IPMってなんだ?という方は前回のブログ「ミニ特集「公文書と〈害虫〉」より ②IPMとおまけの展示」をどうぞ。

    9月の館内IPM(トラップ調査など)の様子をご紹介します。(クリックすると各項目に移動します)

    IPM日記その1 8月26日 はれ 

    燻蒸くんじょう処理を終えた資料を保存庫に運び込みました (撮影協力:共立サニタリー株式会社)

    トラック到着

    当館では、燻蒸を外部の専門業者さんに委託しています。この日は燻蒸処理を終えた資料を館内に搬入する作業に密着しました。

    資料を搬入する前に、保存庫までの経路を確保します。①カビの胞子も取れるHEPAヘパフィルター付掃除機をかけ、靴を履き替え、②アルコール清拭の後、③養生ようじょうシートを貼り、④通路の粘着マットを剥がし、ベタベタを復活させ、やっと資料の搬入です。資料と一緒に有害生物を持ち込まないよう、とても気を使っています。

     

    2日後…、資料のガス残量調査を行いました。殺菌・殺卵・殺虫処理を行うガスは人体にも有毒です。搬入前にも測定はしていますが、搬入後の資料からゆっくり出てきているガスがないかどうかを検知管で調べます。燻蒸に使われた薬剤は酸化エチレンガスで、測定結果は0ppmでした。資料を長く保存していくための燻蒸処理ですが、密閉空間の保存庫内で長時間作業する職員や、資料を利用する皆さまの安全にも気をつけて行われています。

     

    IPM日記その2 9月3日 くもり 

    館内のトラップ調査を行いました(文書班)

    館内の各エリアに設置した有害生物モニタリング用のトラップを回収して、新しいトラップを置きました。

    今月は保存庫内の設置個所を5倍に増やし、翅のある虫用に地上1メートルの高さのフェロモントラップも設置しました。この翅のある(飛ぶ)虫とは…【シバンムシ類】を想定しているそうです。来月回収しますが、絶対にかかってほしくありません!(シバンムシ写真提供:有限会社アトム商事)

    館内各エリアの月間の温湿度データと、トラップにかかった昆虫をチェックして、記録します。

    (トラップ写真左)外部からの出入りがあるエントランスエリアのトラップには、他のトラップと違い、色んな昆虫がかかります。

    (トラップ写真右)クモ2匹のように見えますが、チャタテムシという小さい虫がついています。チャタテムシは湿気とカビのサインなので、生息数を増やさないための予防対策が必要です。目下の課題は、湿気をこもらせてしまわないための空気の対流をつくることです。

    このデータをもとに館内の環境や昆虫相、昆虫密度の変化、侵入経路などを分析することで、現在の館や職員の対策等の弱点が分かります。館内IPM(総合的有害生物管理)は、虫の調査をすることだけではなく、温湿度をこまめに確認すること、食品や植物、土などを持ち込んではいけないエリアをバックヤードに入る人間全員がきちんと理解して守ること、などなど、日々の積み重ねなのです。

    1か月後…、回収されたフェロモントラップにはシバンムシはかかっていませんでした。ひきつづき監視を続けます。

    2か月後…、窓枠のカビを発見。清掃を行った。普段開けることのない場所のため、ホコリが栄養となり、空気の対流が少なく湿気がこもってしまったようだ。

    IPM日記その3 9月11日 くもり 

    昆虫侵入の原因調査を行ないました(撮影協力:有限会社アトム商事)

    通常は予防中心の館内IPMですが、薬剤による対処をすることもあります。

     

    第二閲覧室の換気ダクトから小さい虫の死骸が落ちてくる日が続いたため、この日は専門の委託業者さんと一緒に原因を探りました。ほかのダクトの下には全く落ちていなかったため、室内への虫の侵入というより、このダクト内に問題があるようです。内側と外側の様子を確認し、「ダクトの中に侵入した虫などの死骸に、他の虫が集まる、または発生し、換気ダクトから落ちて来たのではないか」という仮説のもと、ダクト内に少量の殺虫剤を揮発させ、様子を見ることになりました。この虫は文化財害虫ではありませんでしたが、小さな虫の死骸が知らせる異変に気付き、施設内外のメンテナンスを行うことも館内IPMの一環です。

    おまけ

    トラップに貼りついた虫は、拡大するとこのように見えます】(写真提供協力:有限会社アトム商事)

      

    ↑左から、死番虫(シバンムシ)2種類、紙魚(シミ)、茶立虫(チャタテムシ)

      

    ↑左から、タカラダニ、トビムシ、ヒメマルカツオブシムシの幼虫

    いかがでしたか?公文書館で働く職員には、歴史公文書として当館で保存される資料たちを、将来の世代に手渡すための責任があります。専門の委託業者の方々の力もお借りしながら、日常の点検や予防対策を通じて、私たち職員も新しい考え方「IPM(総合的有害生物管理)」とその実践について学んでいるところです。

    福岡共同公文書館では常設展の一部を入替、秋のミニ特集「公文書と〈害虫〉」がご覧いただけます。Web展示で一部資料をご紹介しておりますので、そちらもどうぞ。

     

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